眼瞼下垂症になる病気には多数の疾患がありますが、比較的頻度の高い後天性疾患 [ 老人性(加齢性)眼瞼下垂症、コンタクトレンズ性眼瞼下垂症、重症筋無力症(眼筋型)など ] の患者は、当院にもよく相談されることが多くなってきました。
特に、壮年・高齢の方の中には、自分が老人性眼瞼下垂であるということを知らずに生活していることも多いようです。視野障害は歳のせいだと自分であきらめ、眼瞼下垂症に付随する不定愁訴のためにいろいろな病院を巡って異常無しと診断され、放置されている場合もしばしば認めます。適切にあるいは運よく眼瞼下垂症と診断されても、治療施設がわからずに、娘あるいは息子さんが親の眼瞼下垂症状をインターネットで調べて、一緒に当院へ来院して相談されることもしばしばあります。このような場合、眼瞼下垂症手術 ( 眼瞼挙筋腱膜修復法等)は勿論ですが、 余剰皮膚切除も同時にしてあげるので、上眼瞼に被さっていた余剰皮膚の重さがなくなると同時に整容的にも若返るので、患者さんから大変感謝されます。また、上眼瞼のみ若返ると下眼瞼の皮膚弛緩による老け顔が目立つようになるため、後日自費で下眼瞼皺取り術を希望される方も多いです。
次に多く受診される頻度の高いのがコンタクトレンズ性眼瞼下垂症、即ち、コンタクトレンズ歴の長く、眼瞼の左右非対称と視野障害を訴えて来院される患者さんです。時に神経原性や筋原性の疾患も考慮しなければならない場合があるので、その除外診断は重要で、疑われる疾患があれば極力高次病院へ紹介しています。この疾患は年齢が 20 歳前後から中・高年齢層までと年齢範囲が広いのが特徴です。下垂症状が片側のみ、両側、左右程度の異なる眼瞼下垂が混在している場合もあり、どのパターンが頻度的に高いのかは不明です。特に社会生活上活発に活動している方にとっては、その視野不良による不便さと不定愁訴ならびに整容的観点からも深刻です。なるべく手術を早くしてあげようと思っても、仕事の調整や術後の腫脹がかなり長期(約 1 ヶ月)にわたり続くことを考慮したりすると、本人もなかなか手術に踏み切れないこともあります。つくづく想う事は、本人が手術を受けるに当たり、仕事場や家庭の方々の協力が不可欠であるということです。即ち、周囲の理解と支持があってこそ、本人も安心して手術を受ける決意が出来るのです。
症例としては比較的少ないのですが、重症筋無力症(眼筋型)で薬物治療にてなかなか改善しない場合に、手術希望で直接来院される患者さんがおられますが、基本的には投薬治療を受けている主治医とよく相談して、紹介状(手術の許可あるいは承諾)を書いて頂くことが理想的です。患者さんの疾病情報を医師同士が共有して連携が容易になるため、遅滞無く手術を行うことが出来るからです。
当院で行っている眼瞼下垂症の手術は外来手術なので、東京圏であれば日帰り手術が可能であり、多少遠方で術後の翌日来院に不安がある場合には当ビル内のホテルや近郊のホテルに宿泊すれば問題ないですが、付き添いの方が一緒に来院した方が身の周りの世話をしてもらえるので、患者さん本人も安心感を得やすいと思います。また、術後 3 日間程度は患部をよく冷却しておくことが肝要で、この処置を怠ると、眼瞼周囲に術後皮下出血(いわゆる‘くま')が目立つことがあるので注意が必要です。
2006.05.12
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