眼瞼下垂症の患者方が多数来院されるようになり手術件数もふえてきましたが、最近特に印象に残るご夫婦の症例がいくつかあり、ご当人に不利益のない範囲で多少の脚色を加えてお話したいと思います。
第1話
熟年夫婦で一緒に来院され、「眼を開けているのがつらい」「顎を上げたり、額にしわをよせないと見にくい」「頭痛、肩こり、眼の奥が痛い」などの典型的な症状があり、共に加齢による眼瞼下垂症でしたので、手術を勧めました。
ご一緒に同一日に手術しようと思っていたところ、二人住まいで親族が近くにいないため術後の身の周りの世話などをしてもらえないのでお互いに不安があるとのことで、日時をずらして手術したいとのこと。まずご主人の手術をして術後経過順調のため、奥様を1ヶ月ほどずらして手術をしました。共に症状の改善が認められ、術後の結果にご満足していただけました。現在はご夫婦で積極的に社会と関わりあってボランティアもしているとのことです。
このような例は当院では現在のところ比較的稀ですが、超高齢化社会に近づくにつれて、ごくありふれた光景になるのではないでしょうか?
第2話
やはり熟年カップルですが、奥様が眼瞼下垂症の手術希望で来院され、ご主人が付き添いで来院された方です。勿論奥様本人は手術をされて症状の改善が認められ、整容的にも若返って大変満足されました。付き添われてきたご主人が、「妻がこんなに若返るなら、自分の下眼瞼の弛みを改善してくれないか」と問われました。これは加齢による変化なので病気にはならず、美容手術になる旨を説明したところ、妻だけ若返って自分が年寄りなのは不釣合いなので、是非行って頂きたいとのことで除皺手術をしました。
奥様もご主人もこの結果に満足されて夫婦仲がより緊密になったとのこと。
これに似た例は知人、友人や親子などが一緒に来院された場合に時々あることですが、ご夫婦の場合は意外と少ないように思います。年を重ねるにつれ、夫婦が寄り添って生きる性を教えていただいたような気がします。
第3話
このご夫婦も、夫の眼瞼下垂症の手術希望でご一緒に来院されました。眼瞼下垂症の手術は勿論トラブルなく経過良好でしたが、奥様が付き添いとしていつも来院されたのですが、ある日、来たついでに最近出現した皮膚腫瘍を診てほしいと言われ、診察してあげたところ皮膚癌の疑いがあったので至急に手術しました。案の定、早期皮膚癌でしたが、進行性ではなく大事に至らず安堵した次第です。
ご高齢になると皮膚老化も進行して様々な皮膚疾患になる可能性が高くなってきます。この例のように「ついでに診て欲しい」と言われて、思わぬ疾患を拾い上げることもありますので、遠慮せずに気になる箇所があるようでしたらご相談下さい。
第4話
このご夫婦は皮膚疾患(皮脂欠乏性皮膚炎)の相談で来院されたのですが、初診の診察時に明らかな眼瞼下垂を認めましたが、ご主人は「歳のせい」と思い諦めていたそうです。手術すればかなり改善することが多い旨説明したところ、是非手術して欲しいとの申し出があり、手術を行ったところその改善に大変喜ばれました。奥様はこの手術の付き添いで何回か来院された折に、孫がいつも顔面のシミを指摘するので、高価な化粧品をいくつも試してみたが全く改善せず、何かよい治療方法がないものかと相談されました。当院でQスイッチルビーレーザー治療して除去したところ、長年の懸案であったシミが消失して大変感謝されました。
情報が氾濫するインターネット時代になり、いくらでも情報は入手できると思われがちですが、年配になると口コミ以外の情報入手が意外と出来なかったり、歳のせいだと諦めてしまったりしがちなのではないでしょうか?勿論ご家族による情報収集のためのサポートも必要ですが、私達形成外科医や皮膚科医も眼瞼下垂症やシミ疾患などを啓蒙して認知させてあげることも重要な職責ではないかと痛感した次第です。
2009.01.14 |